一度会った人を忘れない!?犬にはどれくらいの記憶力があるの?
久しぶりに会った友達の犬が尻尾を振りながら駆け寄ってくると、「自分のことを覚えていてくれたんだな」と思い、嬉しくなります。
犬も人間と同じようにいろいろなことを記憶しているようなのですが、人間の記憶力とはどんな違いがあるのか、疑問に感じたことはありませんか?
そこで今回は、犬の記憶力について説明したいと思います。
人間と犬の記憶力を比較しながら解説していきますので、興味のある方は読んでみてくださいね。
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Contents
人間の記憶力は?
まずは、人間の記憶についてご説明します。私たちの記憶には「陳述記憶」と「非陳述記憶」の2種類があります。
陳述記憶
陳述記憶は「意味記憶」と「エピソード記憶」にわけられ、人に伝えることのできる(陳述)記憶を指します。
「意味記憶」とは、テスト前に猛勉強をして必死に単語や方程式を覚える時など、一般的な知識や事実に関する記憶のことで、1度覚えた後はすぐに忘れてしまうことが多いようです。
また、過去の楽しかったり悲しかったりした思い出を思い出すことがありますが、これを「エピソード記憶」といい、自分の体験を通して覚えているもので、忘れにくい記憶とされています。
非陳述記憶
非陳述記憶は運動に関わる記憶を指します。
その中でも、日常的な動作や運動など、トレーニングを行って体で覚えることを「手続き記憶」といい、同じ経験を繰り返すことで記憶されています。
私たちが箸の持ち方や歯磨きの仕方を忘れることがないのは、この手続き記憶が働いているからでしょう。
手続き記憶と同様に、同じ条件を繰り返すことで起こる「条件反射」というものがあります。
「パブロフの犬」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
犬にごはんを与える際、毎回ベルの音を聞かせるようにしていたら、そのうちベルの音を聞いただけで犬はごはんを思い出してよだれを垂らすようになったという話です。
これは犬がベルの音が鳴ったらごはんが出てくることを記憶していることになります。
このように意識に関係なく反射的に起こる行動を「条件反射」といい、「非陳述記憶」の1つとして分類されています。
記憶の分類は他にもある
人間の記憶には2種類あるとお伝えしましたが、記憶を保てる期間で分類されることもあります。
- 感覚記憶(数秒間)
- 短期記憶(数秒〜数十分間)
- 長期記憶(永続的)
目にしたものや聞いたものを数秒だけ覚える「感覚記憶」、数分から数十分ほど覚えていられる「短期記憶」、いつまで経っても覚えている記憶が「長期記憶」です。
長期記憶にはエピソード記憶や手続き記憶も含まれます。
人間はこれらの記憶を使い分けて生活しています。
すべての記憶を完璧に覚えることは難しいため、特に必要なことだけを選んで記憶しているのです。
犬の記憶力は?
それでは犬の記憶はどうなっているのでしょうか?
実は犬にも人間と同じように感覚記憶、短期記憶、長期記憶があるのです!
一瞬で目の前を通り過ぎるものに関しては数秒で記憶が消えてしまいます。留守番中にイタズラをして、飼い主さんが帰ってきた時に叱っても、何で叱られたのかがわかりません。
犬の記憶は人間と違ってシンプルです。
人間は今朝食べたものを思い出せますが、犬は思い出せません。必要がないからです。
美味しいものや食べられないもの、危険なもの…など、生き延びるために必要な情報だけを記憶しています。一説によると、記憶できる容量に限りがあるともいわれています。
犬はさまざまな情報を関連付けて記憶する
生きていく上で必要なことしか記憶しない。それが本来動物が持つ記憶力です。
しかし犬がペットとして飼われるようになってからは、嬉しいことや楽しいこと、嫌なことなど、生きる上で必要のない記憶まで留めるようになりました。
犬にしつけをする際、おすわりをしたらおやつを与えるという方法がありますが、これはおすわりをしたら美味しいものがもらえると記憶しているからです。
このように1回の行動は短期記憶であったとしても、同じ状況が何度も繰り返されれば、長期にわたって記憶が保持されることになります。
一度会った人や場所を覚えている?
さて、犬は1度会った人や場所を覚えているのでしょうか?
犬は物事を関連付けて覚えるとお話したように、条件がそろった場合に記憶力を発揮します。どんなパターンがあるのか、以下にさまざまな例を挙げてみました。
以前に会った人
散歩の途中で知らない人に出会い、頭を撫でられただけではおそらくすぐに忘れてしまうでしょう。しかし出会った人から美味しいご褒美をもらったり、一緒にお散歩したり、遊んだり…など自分にとって良いことがあった場合、相手を記憶していることがあります。
この場合は「エピソード記憶」に当てはまり、嬉しかったことや楽しかった思い出と相手を結び付けて思い出しているのです。
たとえ会った時間が短くても、何度も繰り返していくことで「長期記憶」になり、いつまでも覚えていることもあります。
しかし、久しぶりに再会して以前と容姿が大きく変わっている場合には、犬は初めて見るような態度をとるかもしれません。
それでも犬は相手の顔だけでなく「声」や「匂い」など複数の情報を関連付けて覚えているため、それらを確認した後に思い出すこともあります。
いつものお散歩コース
犬とお散歩に出かける時、こちらが誘導しなくても自ら先に進んで歩いていくことがありますよね?これはいつも同じコースを繰り返しお散歩することで覚える「手続き記憶」に当てはまります。
マーキングした際の尿の匂いが影響していることもありますが、複数のお散歩コースがある場合でも、1つ1つのコースを覚えて進むことがあるようです。
だからといって迷子にならないわけではありません。犬には帰巣本能があるといわれていますが、シニア犬は道に迷って保護されることも多くあります。
いつものお散歩コースだから覚えているはず!と、自由にお散歩に行かせたりしないようにしてくださいね。
フードがおいてある場所
犬はお腹が空くとその周りをうろついたり、辺りをキョロキョロと見渡していることがあります。ここにいれば美味しいごはんがもらえると、場所とフードを関連付けて覚えているためです。しかしフードの置き場所が定まっていない場合には、こうした様子は見られないかもしれません。
病院に連れて行くのを嫌がる
楽しいことや嬉しいことを覚えているように、嫌なことや怖いことももちろん覚えています。病院へ行くときに決まって車に乗せているようなら、車と病院を結び付けて乗車を嫌がったり、アルコールの匂いに反応して威嚇したりすることがあります。痛かったり、怖かったりした思いが「エピソード記憶」として残っている証拠です。
人間も嫌なことほど強く記憶してしまうものですが、こうした嫌な記憶を良い記憶に変えるためには、「病院」と「良いこと」を結びつける工夫が必要です。
なぜ犬は飼い主さんを忘れないのか
長い間離れ離れになっていたにも関わらず、犬はちゃんと飼い主さんを覚えていた…という話をよく耳にします。
犬は飼い主さんから世話をされていたことを覚えているのでしょうか?
その人が飼い主さんかどうかを見極める時、犬はいくつかの情報を頼りに判断します。
匂いや声、仕草、話し方、言語、服装や足音など、さまざまな情報と結び付けて、飼い主さんだとわかるのです。
そのためたとえ数年離れていたとしても、それぞれの情報を組み合わせることで飼い主さんを思い出すことができます。
あまりにも外見が変わりすぎていた場合は、一瞬戸惑う様子を見せることもありますが、それは犬が誰なのかを一生懸命考えている時です。
他の家族との関係性を見て、「知っている人なのかな?」と思いながら接し、「知らない人だ!」とわかったら対応を変えることも。
また、同じようにいくつかの情報を頼りにして家族を見分けることも可能です。
まとめ
犬は3日の恩を3年忘れず、猫は3年の恩を3日で忘れるということわざがあります。
もともと群れを形成して生きる犬は、家族を大切にします。その中で嬉しいことや楽しいことを、いろいろな物事と関連付けて覚えることで長く記憶を保っていられるようになるのですね。
愛情をかけた分だけ、応えてくれるのが犬の魅力です。3日の恩を3年忘れないということわざも、あながち間違ってはいないのかもしれませんね!