犬の心臓病について【僧帽弁閉鎖不全症ってどんな病気?】
2018/02/18
突然、愛犬が心臓病と診断されたらあなたはどうしますか?
もちろん獣医さんから対処法や治療法についてしっかり説明してもらえますが、あなた自身も不安で色々と調べるはずです。今回はそんな方々に私の実体験を踏まえてお話が出来ればと思います。
我が家の愛犬みらん(ミニチュアダックスフンド♀)は2年ほど前から心臓に少し疾患を持っています。現在12歳になるのですが、ある時の定期診断後に獣医さんからそう告げられました。
とは言っても重度の症状ではなく、薬と生活環境の改善などで進行を遅らせれば、特に大きな問題にはならないということでした。
では一体、犬の心臓病とはどんななものか?みらんはどんな診断だったのか?その症状や治療法、気を付けることはあるのか?など獣医さんからの説明も含め、ここで解説していきたいと思います。
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Contents
犬の心臓病、具体的にどんな病気?
犬の心臓病で、約95%以上が僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)という病名になります。愛犬みらんもこれに該当します。
僧帽弁逆流や心臓現膜症とも言いますが、これらは全て同じ病気を指しています。
今回は、その僧帽弁閉鎖不全症についてお話させてもらいたいと思います。
僧帽弁閉鎖不全症とは?
犬も人間と同じように、心臓に左心房・左心室・右心房・右心室の4つの部屋があります。
通常、血液は肺→肺静脈→左心房→左心室→大動脈→全身を循環→大静脈→右心房→右心室→肺動脈といった形で循環します。
そして左心房と左心室の間には僧帽弁という薄い弁があり、僧帽弁は左心室から左心房へ血液が逆流することを防ぐ役割を持っています。
加齢などによってこの僧帽弁がうまく閉じなくなるのが、僧帽弁閉鎖不全症なのです。
僧帽弁がうまく閉じなくなると、左心房→左心室への血液の流れが逆流したり、心臓が肥大していきます。血液が逆流すると、全身に送り出される血液の量が少なくなり、その分をカバーしようと心臓がいつもより活発に働いてしまい、結果的に体へ大きな負担を与えていきます。
こちらは、実際に撮ったみらんのレントゲン写真です。
【1年前】
分割されている上が上部から撮ったもので、下が側面から撮ったものです。真ん中にある丸い部分が心臓になります。この時は心臓の幅は約6cmほどでした。
【現在】
等倍ではないので少し分かりづらいですが、1年前に比べて心臓の幅が約6.4cmと0.4cmほど大きくなっています。
また上部から撮ったレントゲン写真を見ると、1年前に比べて心臓が少しボールのように丸みを帯びてきているのが分かります。
僧帽弁閉鎖不全症の症状
僧帽弁閉鎖不全症の初期にはほとんど症状が見られないことが多いですが、進行してくると、血液の逆流つまり血液の循環が悪くなるので、少しの運動で疲れてしまったり、息苦しくなって散歩中でも座り込む、寝てばかりで活動性が低下することがあります。
また、さらに進行してくると、チアノーゼ(舌の色が紫)になったり、食欲不振、体重の減少などが見られ、ひどい場合は脳にしっかり血液が循環せず失神してしまうこともあります。
咳もこの病気の大きな特徴です。みらんは激しい運動をしたり、胸にモノが当たったときなどに「カッカッ」といった乾いた咳を出します。
これは獣医さんにも言われたことなのですが、乾いた咳は僧帽弁閉鎖不全症の犬に良く見られる症状で、心臓の肥大により気管が圧迫されるため、このような咳を出すということです。
これがさらに悪化すると肺に水がたまる肺水腫(はいすいしゅ)という状態になり、湿った咳を出したり、呼吸がとても苦しくなります。
我が家のみらんの場合、たまに乾いた咳を出しますが、すぐに疲れたり息苦しくなったりといった症状はあまりないので、現在は通院しながら状況を見守っています。
検査について
僧帽弁閉鎖不全症はなかなか気付いてあげれない病気です。事実みらんの場合も、10歳から定期診断をするようになり、その際のレントゲンとエコー検査で初めて発覚しました。
基本的には、粘膜の色や咳の状況、血液検査などを行います。また聴診や心電図で不整脈など心臓に異常がないか検査します。そして、少しでも疑わしい場合に、心臓の大きさを確認するためにレントゲンを撮り、さらに血液の逆流や弁の動きを確認するためにエコー検査を行います。
早期発見のためにも、なるべく年に1回、シニア犬の場合は数ヶ月毎など、定期的に検診を受けることを推奨したいと思います。
治療について
病気の段階に応じてACE(エース)阻害薬という血管を広げ、血圧を下げる薬を投与し、心臓の負担を緩和させてあげます。
また症状に応じて、強心薬や利尿薬、血管拡張薬など、心臓の動きを助けたり、症状を緩和させる薬を投与します。
ただ残念ながら、僧帽弁閉鎖不全症は薬で完治する病気ではありません。薬で病気の進行を遅らせ、症状を抑えることで病気と上手く付き合っていくことが大切なのです。
我が家のみらんには、獣医さんからアピナック錠というACE阻害薬を処方され、これを毎日飲ませています。
薬の種類
心臓病に使用される薬にはさまざまなものがあります。正しい検査や症状の進行状況、獣医さんのアドバイスで薬を選んでください。また基本的には一生投薬になるので、続けることが重要です!
ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬
血管を広げ、血圧を下げる作用(血管拡張)、心臓の肥大や線維化を抑制することで心臓の負担を緩和させます。また腎臓の機能を守る作用もあります。
副作用はほとんどなく安心して与えることができる薬です。
利尿薬
おしっこの量を増やして、体の余分な水分の排泄をうながす薬です。肺に水がたまったり(肺水腫)、足のむくみなどの症状が見られたときに必要になります。
副作用として脱水症状がありますので、お水をいつでも飲めるようにしてあげてください。
強心薬
心臓のポンプの働きをサポートし、心臓の負担を減らします。代表的な薬としてジギタリスやピモベンダンがあります。
副作用として吐き気や下痢、食欲不振などがあります。
血管拡張薬
血管を広げることで、血圧が下がり、血液を全身に送りやすくなります。代表的な薬としてカルシウムチャネル阻害薬(アムロジピン)、硝酸イソソルビド、ヒドララジンなどがあります。
副作用として低血圧による鬱(うつ)や体力低下があります。
僧帽弁閉鎖不全症にかかりやすい犬
僧帽弁閉鎖不全症はシニアの小型犬に多く見られます。代表的な犬種としては、チワワ・シーズー・ポメラニアン・マルチーズ・プードルなどです。
またキャバリアキングチャールズスパニエルでは特に多く、若い段階でも発生することがあります。
飼い主さんにできること
このように心臓病を患うと、さまざまな症状に苦しみます。少しでも進行を遅らせるために定期的に通院したり、薬を与えることはもちろんですが、日々の生活でも気にかけることがいくつかあります。
① 食事について
人間と同じで、犬の場合も塩分を抑えることが推奨されます(※ただし適度な塩分の摂取は必要)。ジャーキーのような嗜好品も控えたほうが良さそうです。
犬にとっては素材そのものに含まれる塩分で十分なので、ドッグフードを選ぶ際の注意点は、原材料に塩やナトリウムの表記がなく、海藻などが含まれているナチュラルドッグフードが良いでしょう。
ただし軽度の症状のときは、塩分制限の必要はありません。病気の重症度や症状によって推奨する食事も変わるので注意しましょう。
ちなみに我が家のみらんには『カナガン』というナチュラルドッグフードをあげています。少々値段はお高いですが、素材が申し分ないことと、何よりみらんが喜んで食べるので、今も続けて愛用しています。カナガンについては別の記事でも紹介しているので、良かったら読んでみて下さい!
■関連記事
カナガンドッグフードを愛犬に食べさせてみました!【カナガン体験談】
【カナガン公式HPはこちらから】
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② 飲水について
心臓病の犬では、特に利尿薬を服用中は水を飲む量が増えます。そのため清潔な水をいつでも飲めるようにしてあげましょう。
③ お散歩や運動について
犬は心臓病であると自覚することができません。初期の段階では運動をしても、それほど負担になることはないですが、症状が進行すると運動を嫌います。
しかし、犬は本来たくさん走り回りたい動物です。飼い主さんが帰宅したときや出かけようとしたとき、お散歩用のリードを見たりすると興奮して喜びます。これがさらに心臓への負担を増やしてしまいますので、日頃からあまり興奮させないように注意しましょう。
具体的には、帰宅したら興奮しないようすぐに抱っこしてあげたり、お散歩中は他の犬に遭遇しないようルートを変える、長い距離のお散歩はしないなどです。
④ 他の人に預ける
例えばトリミンやペットホテルなど、他の人に愛犬を預けるケースがあると思います。
基本的に心臓病でも軽度の場合、トリミングやシャンプーは問題なくできます。ただしトリマーの人に必ず心臓病であることは伝えましょう。そして美容中の興奮やストレスを出来るだけ抑えてもらうようにお願いしましょう。
ペットホテルに預ける際は、心臓病の状況を説明することはもちろん、毎日飲ませる薬も持参するようにしましょう。ただ、預けている間に心臓病が悪化し、突然心不全の症状が現れることもありますので、預ける際はそのようなリスクをしっかり理解しておく必要があります。
必ず定期的な検診を!!
私の場合がそうだったように、たまたま検診を受けて、みらんが僧帽弁閉鎖不全症の初期症状であると気づくことができました。もし検診を受けていなかったと思うと怖くてたまりません。。
犬の心臓病は、普段の生活ではなかなか気付きにくい病気です。「最近、すぐにバテるようになったなぁ。まぁ高齢だし仕方ないか」などと解釈し、実は全く違う原因が潜んでいるということもあり得ます。
目に見えるあきらかな異常や症状がないと、なかなか病院には行かないものです。私の場合もそうでした。
しかし人間が1年に一度、健康診断を受けるように、愛犬にも健康診断も受けさせてあげてください。特にシニア犬の場合は半年に1回ほどのペースで検診を受けることをおすすめします。
病気を早期に発見することが出来れば、それだけ早く根治、病気の進行を抑えることができます。
大切な愛犬には1日でも長く、そして健康に生きてもらいたいですよね!全ては飼い主さんの愛情に掛かっています。
病気と上手く付き合って、これからも愛犬とともに素敵な『わんライフ』をお過ごし下さい!